平成28年度 事業報告

平成28年度 特定非営利活動に係る事業報告
(平成28年4月1日より平成29年3月31日まで)

1 事業の成果
1)展示会事業等

①ケニア在住の韓国人写真家BT Kim氏の『ケニアの野生動物の写真展』(空の香りWildEmotions)が、NPO主催で平成27年10月31日から11月7日の間、東京・新宿パークタワー第一ギャラリーで開かれた。キム氏は、展示会終了後、展示した写真一式をNPOに委託した。大自然のなかでは、野生動物達は、互いに調和し溶け込んでいる。キム氏の写真は、その大自然の中の野生動物の姿であり、まれに見る美しいアフリカの自然の景観を保全する必要があることを来館者に訴える力があった。NPOは、新しい作品群を日本で広く展示し、多くの来場者に地球の一角に追い詰められている野生動物の保護の必要性に覚醒してもらう活動を継続したいと願っている。

②キム氏は、平成28年2月に、フランスのアートデイーラーの誘いでパリの共同展示会に数点の作品を出展したし、ナイロビ市の国立芸術博物館で平成28年6月11日~7月末日の間、展示会を開催した。NPOは、菊池代表を6月10日から17日の間、ナイロビに送り、6月11日に開催された韓国のケニア大使を主賓としたオープニング セレモニーに参加した。

③ナイロビの博物館での展示会は、更に、キム氏に平成29年4月5日から30日までの間ニューヨークでの展示会開催を実施する道を開いた。

2)国際交流事業

①野島優子理事と菊池徹理事長が平成25年1月と平成26年1月に実現したインドでの『安来節だんだん公演』に続いて、平成28年1月に第3回インド公演を国際交流基金(Japan Foundation)の助成を受けて実現する計画であったが、助成の認可が遅れ、結局、条件が整わず助成を受けることが出来なかった。

②メンバーである飯島宏氏は、東北地方の「こけし人形」を多数持っており、これをインドの方々の日本文化の理解のために使ってもらえればとの意向があり、ニューデリーの
BBS校の日本語教師ジャスプリート アフジャ先生を通じてJALSTA(Japanese Language Students and Teachers Association)に2回に亘って「こけし人形」を贈与した。また、一部(3本)はケニアの海岸部モンバサ近郊で日本食レストランを開店した韓国人SI Lee氏にその店の飾りとしてもらうように贈与した。

③菊池代表は、平成28年6月7日にナイロビを訪問し、ナイロビ日本人学校の平田博嗣校長先生と平成29年3月8日に同校で「安来節だんだん公演」を実施することを約した。そのほかに、現地校キリマニ校や日本人学校のAdministrator渡部理恵さんの紹介でナイロビ国際校などにコンタクトした。
石川和博氏の主宰するNGOフーチャーキッズプロジェクト(アフリカ最大のスラムであるキベラに住むストリートチルドレンの教育に携わっている)での「安来節だんだん公演」を提案した。

④平成29年3月6日から14日までの間、野島師範、NPOメンバーの鷹觜義哲氏と菊池徹代表の3名がナイロビを訪問し、ナイロビ日本人学校とNGOサイデイアフラハでの公演を実施し、アフリカの子供たちに日本の安来節を踊ってもらった。この一行は、ケニア海岸部のモンバサで日本食レストランを開いているリー氏を訪ね、1980年に日本企業がODAにより友好親善の象徴として建設したモンバサ島と本土を結ぶ橋を視察したり、キム氏の写真撮影の現場であるマサイマラ自然公園を視察し、野生動物と大自然の融合を観察した。(詳細は野島師範と鷹觜氏のケニア紀行文をご一読ください)

3)KWSの野生動物孤児院の視察

菊池徹代表は、平成28年6月13日にKWS(Kenya Wildlife Services)を訪問し、ついで、同公社の経営するOrphanageを視察した。このOrphanage に保育されているチーターには、国連の事務総長が里親になっているという檻があり、なかに毛並みのいいチーターが育っていた。他の檻にもハイエナやレオポルドやチーターの子供が入っていた。大きく育ってしまったライオン数頭のはいった檻は、臭気がひどく、糞尿が堆積し、そのなかで暑さに耐えない体の雄ライオンの周りに雌ライオンが数頭絡まるようにして伏せていた。奥の小屋は、密閉された小さな檻が数基あり、その中にチーターの幼児が3頭怯え切った表情でとらわれており、そのほかの檻にも体が入りきれないほどのキリンの子供が、息苦しそうに閉じ込められていた。医療を施している様子もないし、恐怖を除いてやる様子でもなく、このまま死んでしまうのを待っているような環境であった。
KWSに来ている海外青年協力隊員の方に意見を聞くと、世界各国の援助金や寄付金はかなりの額あるのだが、すべてKWSを通じて費やされており、野生動物たちの孤児の育成には十分に届いていない。KWSが、自己消費してしまっているのが現状なので、更に、NPOからの寄付を増やしても、このままのやり方では、野生動物の保護には役立たないでしょうとのことであった。
この意見は、ナイロビ日本人学校の平田校長先生からもお聞きした。
ナイロビ日本人学校が、NPOから資金を受け取り、直接、食料などを野生動物孤児院に届ければ、そして、時々、里子となった野生動物の孤児の成長を観察すれば、もしかしたら、成功するかもしれないが、そのためには、担当の教員や職員を加えたシステムを作らなければならず、現実的には、難しいだろうとのご意見をお聞きした。

2 事業の実施に関する事項
1)平成28年6月10日から17日の間、キム氏の写真展を応援した

(準備活動)6月10日に菊池代表がナイロビに到着したころ、ナイロビ博物館では、6月初めから写真展の準備が始まっており、キム氏や彼の弟たちを中心に数名の男たちが黙々と働いていた。今回の写真は夜明けを迎えるマサイマラの風景から、動物たちが闇の中で目を光らせながら、家族を守っている姿や、美しい夜明けとともに動き出す動物たちの息吹が感じられるような写真が紹介されていた。そして、草むらに取り残された野生動物の子供たちの写真は、親たちが狩りに出かけて留守と思わせながら、実は、その親たちは、既に、肉食獣に殺されて帰ってこないというストーリーをのぞかせて印象的だった。一枚一枚の写真が構成する無辺の大地と野生動物の織り成す生と死のドラマにしばらく立ち尽くす参観者が多かった。
(タイトル、『Reflections』)今回キム氏はタイトルをReflectionsとし、同名の写真集を発行した。これは、前年に新宿で実施した展示会の「空の香り」(Wildemotions)から更に芸術性を高めた作品となっていた。まるで、野生動物を擬人化し、過酷な環境に耐えながら生きる「生活者」として、大自然に溶け込む生き様を、正面からキャッチしていた。
(レセプション)開催3日目、6月11日正午より1時間程を使って賑やかに開催された。
司会役は博物館(National Museums of Kenya)のArt Curator Ms Lydia Galavuが務めていた。駐ケニア共和国韓国大使をはじめ韓国人会の幹部たちが顔をそろえていた。フィンランド大使館のCommunication officerであるMr.Sami Husaも列席していた。総勢ゲスト50人余が会場に集った。新聞ネイションズなども駆けつけていた。地元ナイロビでもキム氏の写真家としての評価は上がっており、韓国人会を中心に新たな理解者が増えていた。

2)平成29年3月6日から15日の間にNPOの3人がケニアを訪問した。

平成28年6月の菊池代表による「下調べ」とナイロビ日本人学校やNGOサイデイアフラハとの約束を果たす目的で野島優子理事の「ケニアで安来節だんだん公演」を開催するべく出発した。3月8日のナイロビ日本人学校と14日のサイデイアフラハでの公演は、成功裏に実施された。石川和博氏のNGO フューチャーキッズ プロジェクトでの公演はキベラ内での公演となるため、銃で武装した警察官の同行やそれでも命の保証ができないとのことで回避することになり、代わりに荒川勝巳氏のNGOサイデイアフラハが入った。サイデイアフラハの子供たちは安来節に大いに感化され、踊りは非常に巧であった。

事業名 事業内容 実施日時 実施場所 従事者の人数 受益対象
BT Kim
ケニア野生動物写真展
(Reflections)
写真展
50枚以上
平成28年
6月15日‐
7月末日
ケニア共和国
ナイロビ博物館内ギャラリー
韓国人10人+
NPO メンバー2名
約千人
安来節だんだん公演 体験学習など 平成29年
3月6日‐
14日
ナイロビ日本人学校とNGO サイデアフラハ NPOメンバー3人 50人(日本人学校と200人(サイデアフラハ)
こけし人形 インドのBBS校に寄進 平成28年
5月と8月
日本からインドのJALSTAに郵送 NPOメンバー2名 約100人(日本語科の先生と生徒の組織)
KWSの野生動物孤児院を訪問 KWSと面談し孤児院を見学 平成28年
6月13日
ケニア共和国ナイロビ市 メンバー1名 3-4人(KWS職員)
3 平成29年度活動予定

1)平成29年4月5日(水)から4月30日(日)の間、BT キム氏の写真展がニューヨークで開催される。これを応援する。

2)北海道札幌市でのBTキム氏の「ケニアの野生動物写真展」の声が上がっている。検討したい。

3)国際交流基金(Japan Foundation、New Delhi)の「助成事業」として、インドでの『安来節だんだん公演』(第三回目)が継続できるように努める。

4)アフリカでの『安来節だんだん公演』の第二回公演を企画検討する。

5)東日本大地震と津波の被災地訪問型の「野生動物写真展」や「安来節だんだん公演」を企画検討する。

4 課題

会員の輪を広げ、寄付金や会員の年会費を基盤とした健全な経営を目指す。
会員の年齢や健康が気になる時代に入った。規模は小さくても、心の磨ける企画を検討し、実施したい。

以上
(文責 菊池 徹)